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◎御前様を守り祀るおやじ様◎

 

鳥山…「おやじ様」は「おとっ様」「御役番」「御番主」ともいい神様である「御前様」のお守りと世話をします。御前様とは納戸神様のことで、元々納戸の間でお祀りをし、御神体はメダルだったり掛軸だったりする。御前様をお祀りする家をツモトといい代々長男が「おやじ様」として受け継いでいきます。昭和四十年までは、堺目の信者が九十から百軒ありました。そして上宿、中宿、下宿、三つのツモトがまとめていました。一つのツモトには四つから五つのコンパンヤが集まっています。そして一つのコンパンヤは五から六軒の信者で形成されています。「み弟子」はコンパンヤの代表としてツモトの行事をきり回す「役中」となります。昭和五十八年に三つのツモトの御前様を焼山に合祀してから、各コンパンヤとツモトの関係は希薄になっています。
田淵…元触ではツモトが三つで、その下にそれぞれ七つのコンパンヤがあります。一つのコンパンヤは六軒から七軒ですから、全員で百二十軒くらいです。一軒のツモトに集う家々を「かきうち」と言います。
こちらでは、堺目のように宿元(御前様を祀る家)=ツモトのおやじ様は永代ではなく、任期が三年あるのです。次のツモトを決める方

 

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焼山。元々教会堂やセミナリヨがあった場所と言われ、焼き討ちにあったことからこの名称がついたとも言われている[堺目]

 

法はくじ引きです。ここは出稼ぎが盛んな土地で、当たりでもしたら出稼ぎに出られませんから大変なんです。おやじ様候補が朝八時から集められ、くじを引くのですが、夕方までだれも引こうとしなかったときもあります。長老が当たりは一本しかない、と説得し引かせるのです。桝に米を八合ばかり入れて、その中に印を書き入れた紙を米桝の中に入れておくのです。しぶしぶ当った当人に先輩たちは、家が栄えるからと口説き落とします。おやじ様の役職を持ち、行事をこなすためには何よりも、妻の加勢を借りなくてはなりません。
谷川…鳥山さんのところでは何をお祀りしていましたか。
鳥山…元々、私の所の下宿でお祀りしていた御前様は、メダルのマリア様、小さなキリストのメダル、それに開けずの箱です注?。戦後すぐ学者が来て、開けずの箱を開けてみることになり、。開けてみると、白い骨片のようなものが出てきて、その学者が言うには、二十六聖人の遺骨だと。下宿の御前様は、もともと島山家にあったものではないそうです。

 

 

 

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